『法華経』に学ぶ
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犍けん連れんの四人たちは、そのり領ょう解げ(理解)したところ 『信しん解げ品ほん』の冒頭で先章『譬喩品』の「三車火宅の喩え」を拝聴した、須しゅ菩ぼ提だい、迦か旃せん延ねん、迦か葉しう、目もっを釈尊に告白しました。そして、さらに続けて「釈尊よ、私たちは、ただいま領解した内容について譬喩(喩え話)を使って明らかにしたいと思います」と述べたのでした。すなわちここから展開されるのが「ち長ょう者じゃ窮ぐう子じの喩え」と呼ばれる譬喩で、「法華七喩」といわれる『法華経』の中に説かれる七つの喩え話の第二番目にあたります。 これは、父を捨てて家出した息子(窮子)と、それを見つけた父(長者)との物語です。 息子は幼いころに父を捨て家出をし、放蕩生活を続け生活に困窮しています。そして、父のことはすっかり忘れてしまいました。五十年という歳月が過ぎたある時、息子が父親の屋敷前に現れます。父親は息子に、自分の素性を伏せたまま汚物掃除の仕事を与えますが、次第に屋敷内の重要な仕事を任せるようになり、そして一切の宝物管理を任せるまでになるのです。さらに歳月が過ぎて、息子と心が通じ合うまでになりました。父親は自分の臨終が間近であることを知って、男に自分の息子であることを明かし、ついには自分の一切の財産を相続させるに至った、という物語です。それでは、須菩提、迦旃延、迦葉、目犍連、い   ょわゆる四大声聞と称せられる四人が、釈尊に告白した「長者窮子の喩え」の経文(物語)をもう少し詳しく訊ねてまいりましょう。 「たとえば、このような人があったとしましょう。年端もいかない幼いころに父を捨てて家出をし、他国に住んで十年、二十年、そして五十年という歳月が流れました。この男は歳をとって日々の生活に困窮し、あちらこちらを駆け巡り衣服や信解品第四②-92-

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