『法華経』に学ぶ
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   ④   ③  ② ょることとなりましたが、釈尊は即座に真実説法をされるのではなく、さまざまな手立て、すなわち、方便説法を用いて弟子を導き育て、のちに一仏乗=『法華経』という真実の教えに導き入れて下さることを喩えたものなのです。ところで、中国の天台大師はこの「長者窮子の喩え」を根拠に、釈尊一代五十年(三十~八十歳)のご説法、つまり釈尊の弟子に対する教化次第(過程)を考察されて、すべての経典(説法)を五時(五つの時期)に分類し「釈尊の本意は『法華経』ではじめて明かされる」ということを決定づけられました。これを「一代五時」といいます。五時とは、華け厳ごん時じ、阿あ含ごん時じ、方ほう等どう時じ、般若時、法華涅槃時の五つの時をいいますが、五時を「長者窮子の喩え」の展開に配当し、その説法期間と説かれた経典の名前を記しますと、次のようになります。① 華厳時二十一日間『華厳経』長者が、召使を遣わして窮子を捕らえ、屋敷⑤ 法華涅槃時『法華経』八年間『涅槃経』一に引き連れてくるが、窮子は拒絶してその場を逃げ去る。阿含時十二年間『阿含経』長者が再度二人の召使を遣わして窮子を誘い、仕事(汚物掃除)を与えて屋敷に引き入れる。方等時八年間『維ゆい摩ま経きう』『阿弥陀経』『大日経』等さまざまな大乗経典長者と窮子の心が通い合い、信頼関係が結ばれ、窮子は長者の屋敷を自由に出入りするようになる。般若時二十二年間『般若経』窮子は長者の指示を受けて一切の財産管理を任される。日一夜窮子は長者の実子、長者は窮子の実父であることが明かされ、父の所有する財産すべてが子に与えられる。-99-

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