『法華経』に学ぶ
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迦葉が記別を受けた姿を目の当たりにした須菩提、迦旃延、目犍連の三人は「私たちにも迦葉と同じく、記別をお授け下さい」と懇願したのでした。釈尊は三人の思いを受け止められ、記別を授けられます。はじめに記別を授けられたのは須菩提です。須菩提は、釈尊に祇園精舎を寄進したスダッタ(須達多)長者の甥で、生まれた際には家中のものが虚無となったといわれています。須菩提は解げ空くう第一と称されますが、空とは、すべての事物に実体はない、ということです。たとえば、家は家でないものの集合体です。柱や壁、扉や廊下、屋根や天井は家の一部ではありますが家ではありません。家ではないものが依りあって、家というものが出来上がっているのです。つまり、ありとあらゆる事物は相依った関係性で存在している、ということです。それでは経文を訊ねてまいりましょう。「須菩提は、三百万億那由他という数えきることのできない数多くの仏に仕えて、さまざまに供養を捧げ、清浄な修行を重ねたのちに仏となることができるでしょう。その名を名みょう相そう如来「月の光の如来」といい如来の十号も具えています。名相如来が活躍する国は、宝ほう生じょう国すなわち「宝を生ずる国」といいます。その国土はどこまでも果てしなく平らかで、地面には隙間なく水晶が敷き詰められています。そして花や実、枝や幹が宝石でできている樹木で飾られています。丘やくぼ地、砂や小石、荊いばらや棘とげもなく汚物もありません。宝の花が地面を覆いつくし、ありとあらゆるところが清浄なのです。 この国の人たちは、宝で飾られた何とも珍しく素晴らしい高層建築に住んでいます。声聞の弟子授記品第六③-136-     

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