『法華経』に学ぶ
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 「仏弟子たちは釈尊に『この多宝仏のお姿を拝見させてください』と願い出ました。すると釈尊は、十方に派遣している分ふん身じんをことごとく集められ、宝塔の静止する空中へと行かれました。そして、右の指で宝塔の扉を開かれると、多宝仏がお座りになっておられ、多宝仏は即座に釈尊を宝塔の中に招き入れ、右の半座をお譲りになられたのです」この姿を一塔両尊、あるいは二に仏ぶつ並びょう坐ざといい、お寺の御宝前、あるいはご家庭のお仏壇に仏像として安置されている、中央の宝塔、左の釈迦牟尼仏、右の多宝如来のお姿で、大曼荼羅でいうと、中央に大書された南無妙法蓮華経、左の南無釈迦牟尼仏、右の南無多宝如来になります。 仏弟子たちの願いに応えて釈尊は、大衆を虚空へと導かれ、仏弟子たちは二仏並坐の姿と、十方世界より集まってきた釈尊の分身仏の姿を拝見することができました。迦・多宝・十方分身の諸仏が揃ったということは、ここで、現在説法をされている釈尊、その説法の正しさを証明した過去の多宝仏、十方で教化活動をされている釈尊の分身仏、いわゆる三仏が揃いました。この三仏が揃うのは虚空会の説法十二章のみです。このことについて、日蓮聖人は「釈この『法華経』を未来永劫に伝え広め、生きとし生けるすべてを最上の境界に導き入れたいという、三仏の願いが表明されたということなのです」とご教示くださいます。つまり、釈尊の眼まなこは末法という時代に向けられているという解釈です。さて三仏が揃った後、釈尊は仏弟子たちに三度呼びかけられます。「私は間もなく入滅します。誰かこの娑婆世界で『法華経』を弘める者はいませんか。たいへん難儀なことでありますが、勇気を出して大願を立て、三仏の御前で誓いの言葉を述べて下さい」と。これを三箇の勅宣といいます。-147-   

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