『法華経』に学ぶ
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暁さとされます。これを二箇の諌暁といいます。ところが、仏弟子たちは即座に応えることができません。なぜなら釈尊は「この教えを弘めることは、たいそう難儀なことがあります。それは私が存生の時ですらそうでしたから、入滅後はさらに大変なことです」と念押しをされていたからです。『宝塔品』の末文に「此経難持(この経は持ち難し)」とあるのがその一例です。躊躇する仏弟子たちに釈尊は、第十二章『提婆   達多品』で、悪人の代表である提婆達多の成仏、そして八歳の龍女の成仏を説き明かし、『法華経』が有する莫大な功徳や利益等を再説なされ、大願を立て弘経の誓いを述べるよう仏弟子たちを諌め さてこれに触発されて、薬王菩薩をはじめとする二万もの菩薩が、第十三章『勧持品』の冒頭で弘経の誓いを述べました。続いて声聞や女性出家者たちは、釈尊が指定された娑婆国土では任に堪えないと感じ「娑婆国土では難儀が多いので、異の国土、他の国土で弘経いたします」と誓いますが、釈尊はこれらを黙殺なされました。そして、八十万億那由他という、到底数えきることのできない数の仏弟子たちに、視線を向けられたのです。釈尊の視線を感じ取った仏弟子たちは「私たちは、釈尊入滅の後にありとあらゆるところを往来し、生きとし生けるすべてに、この『法華経』を伝達いたします、どうぞご安心ください」と述べ、さらに二十行の詩句に託して、誓いと覚悟をつぎのように述べたのです。「智慧のない愚かな人たちから、罵詈雑言を浴びせられ、さらには刀や杖で打たれたとしても耐え忍びます」(俗衆増上慢) 「末法の出家者たちは、邪な智慧を持ち、心がねじ曲がり、学ぶべきことを学ばずに高慢です」(道門増上慢)-148-

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