『法華経』に学ぶ
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000000 00000000000000別に委嘱なされたのです。そのことからこの委嘱を「別べっ付ぷ嘱ぞく」、或いは塔の中から委嘱されたことから「塔たっ中ちゅう付ふ嘱ぞく」、さらには『法華経』の肝要を委嘱されていることから「結けっ要ちょう付ふ嘱ぞく」などと称します。委嘱を終えられた釈尊は、続いて詩句を説かれ、上行菩薩をはじめとする地涌の菩薩たちの役割や優れた能力、そしてその功徳などについて「この菩薩たちは私が入滅の後に、私が説いた数多くの教えのいわれや、説法の順序次第を知って、その意義に順じて教えを説き弘めるでしょう。その行いは、太陽や月の光が暗闇を除くが如くです。この菩薩たちは仏の使いとして、世間の人々とともにあって、その人たちの苦悩や暗闇を滅ぼします。そしてついには、多くの人たちを一乗の教えに導き入れます」とお話しになられ、久遠の弟子に委嘱する儀式を終えられたのです。 ところで釈尊は、第十一章『宝塔品』以降多宝如来と並んでお座りのままです。塔の中から上行菩薩をはじめとする地涌の菩薩たちに、滅後末法の弘経を特別に委嘱し終えられた釈尊は、第二十二章『嘱ぞく累るい品ほん』の舞台になると静かに座をお立ちになられ、宝塔の外にお出ましになられました。すると、再び偉大なる神通力をお示しになられ、菩薩たちの頭をなでながら、すべての仏弟子に対して「私は、あなた達が想像すらできない時間を費やして、この上ない最高の真理を修得しました。この教えをあなた達に委嘱致します。すべての人々が教えを聞き、知ることができるように努めなさい」と三度にわたって訓戒なされたのです。この委嘱の儀式を「塔とう外げ付ふ嘱ぞく」あるいは「摩頂付嘱」と称します。 ここで、第十一章『宝塔品』から課題となっていた釈尊滅後の弘経者への委嘱が終わりました。すなわち「起顕竟」の舞台が幕を閉じ、十方より集まり来た分身仏は、各々の本土にお還りになり、-154-

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