『法華経』に学ぶ
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旃せん延ねん・目も ゅょゅい・迦か舎利弗に対して、理論的にストレートに説かれます。これを「法ほっ説せっ周しう」といいます。次いで『譬喩品』では、中根の仏弟子(四大声聞=迦か葉しう・須しっ犍けん連れん)に対して「三さん車しゃ火か宅たく」の譬えをもって説かれます。これを「譬ひ説せっ周しう」といます。そして、下根の仏弟子には『化け城じょう喩ゆ品ほん』において、釈尊と仏弟子との過去世よりの因縁(関係性)を説き、更には「化け城じょう宝ほう処しょ」という譬えをもって、釈尊の教化は始終一貫しており、それは、今なお不断に続き、真実に導きいれるべく、中途に方便の教えを用いることが明らかにされるのです。ところで、この「三周説法」は、釈尊の説法「 し正ょう説せつ段だん」から始まり、その説法を聞いた仏弟子が理解を述べる「り領ょう解げ段だん」へ続きます。そして、仏弟子の領解を聞いた釈尊が、理解の正当性を認める「じ述ゅつ成じょう段だん」があり、結論として、成仏の認可、保証を与える「授記段」となります。図示すれば次のようになりますが、表中の「対たい機き説せっ法ぽう」に対する「万ばん機き説せっ法ぽう」、「応病与薬」に対する「病ゅ菩ぼ提だ原一薬」の語は、筆者の造語です。「対機説法」も「応病与薬」も、聞き手の能力に合わせて、様々な教えを説いて導く説法を意味しますが、成仏は『法華経』に限り、釈尊の真意はこの経に尽くされ、生きとし生けるすべてに対しての教えであるところから「万機説法」、そして病の原因、あるいはその源を根絶するという意味合いで「病原一薬」と表現しました。釈尊は、ご自身の本意、悟りの内容を全ての人に理解させ、成仏に導き入れるために、仏弟子の能力に合わせて三種類の説法方法(三周説法)を用いられたのです。従って第二章『方便品』から第九章『授学無学人記品』に至る八章の内容は、別々のことを説かれたものではなく、すべての仏弟子を悟りへと導くべく「開かい三さん顕けん一いつ・開かい権ごん顕けん実じつ・二にじ乗ょう-12-

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