『法華経』に学ぶ
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未だかつてないことだ。一体これはどういうことなのだろう」また、ともに集う大勢の聴衆も、同じように不思議に思っていることを察知して、過去に数多くの仏様に仕え「法王の子みこ」として誉れの高い文殊師利菩薩に、その謂れを訊ねました。「いかなる由縁があって、不思議な現象が起こり、更に釈尊は、神通力をもって光を放ち、私たちはその光に照らし出された国の様子を窺い見ることができたのでしょうか」と。  文殊師利菩薩は答えます。「この様々な不思議な現象、ことに釈尊が眉間から光明を放たれたのは、真実の教えを語るための前兆です。なぜならば、私は遠い過去に、数多くの仏様にお仕えしてきました。どの仏様も今の釈尊と同じように、不思議な現象を示したのちに、妙法蓮華教菩薩法仏所護念という、誠に尊いこの上ない教えをお説きになられました。このことから、今の釈尊も間もなく  未曾有の大法を説法下さるに違いありません。不思議な現象は、大法=法華経が説かれる前兆なのです。どうぞみなさん合掌して、ともに一心に説法の始まりを待ちましょう。これから語りだされる教えは、きっと道を求める私たちの心を充足させることでありましょう」と、ここで『法華経』の序章にあたる『序品』は幕を閉じ、次章の『方便品』へと展開していくのです。ところで、これら弥勒菩薩と文殊師利菩薩の問答から、大事な仏事が行われる前には、必ず不思議な予兆があるということ。さらに、法華経は過去にも説かれた経緯があり、それは間断なく釈尊の教化が続いていることを意味するのです。-26-

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