『法華経』に学ぶ
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のは何ひとつありません。私には物事の道理を正しく見極める力、生きとしいけるものが、行いによって受けるその報いを正しく見極める力、状況に左右されること無く、心を静かに落ち着ける方法を見極める力、生きとしいけるものの能力を正しく見極める力、生きとしいけるものの願いを見極める力、生きとしいけるものの性質を見極める力、生きとしいけるものを正しい境遇に導くための力、過去世のことを正しく認識し記憶する力、生きとしいけるものの生と死、そして善悪を見極める力、ありとあらゆる煩悩が消滅したことを見抜く力。これら十種類の不思議な優れた能力を私はすべて具そなえているのです。 さらには、教えを説くに際しても、何の畏おそれもありません。一切のことを正しく知り尽し正しい悟りを得ました。また、すべての迷いを絶ち尽し、あなた達の修行の妨げとなる事柄について、憚はばかることなく正しく指摘することができます。また、量は かることのできない、そして際限のない、未だかあなた達が苦しみに満ち溢れた世界から離脱する方法を正しく説き、そして導くことができるのです。私はいついかなる状況にあっても常に冷静です。心を乱すことは決してありません。心の束縛から解放されていますから、とても安らかでその思考には際限がなく、未曾有の真理を体得することができたのです」「舎利弗よ、私の説法は実に巧です。また物腰柔らかで、その言葉は非常に柔軟でありましょう。ですから説法を聞く多くの人々は、この上なく満足し、悦びに満ち溢れるのです。」「舎利弗よ、要するにこういうことです。私は、つて誰一人として知ることのなかった真理をこと悉ごとく成就しているのです」 「舎利弗よ、これ以上説くのは止めましょう。なぜならば、私や数多くの仏が成就した悟りと智慧は、実に希け有うのものであって、仏と仏とだけが諸-34- 

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