『法華経』に学ぶ
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釈尊から「わたしの智慧と悟りの世界は、理解することも、言葉に託すこともできない世界なのです」と告げられた舎利弗は、大勢の弟子を代表してその理由を釈尊に尋ねました。しかし、釈尊はお答えにはなられませんでした。それどころか「止めましょう、止めましょう、もうこれ以上話すことはいたしません。もしこのまま説法を続けて真実の教えを語れば、一切世間の人々はもちろん、神々でさえ驚き、そして疑念を抱くこととなりましょう」と舎利弗の要請を拒絶し、説法を拒まれたのです。釈尊はすでに「諸法実相」という、存在と活動の真実の相を明かされる間際に「舎利弗よ、これ以上説くことは止めましょう」と説法中止の宣告をなされていますから、これが二度目の宣告となります。そこで舎利弗は「どうか説法を続けて下さい。お願い致します、どうか説き明かして下さい。ここに集う数知れない大勢の弟子たちは、優秀で智慧も優れています。説法を拝聴したならば最高の敬意を表し、必ずや信じることでありましょう。」と重ねて説法の要請を致しました。ところが釈尊は「止めましょう、止めましょう。このことを明かせば、一切世間の人々から神々に至るまで、驚きそして疑念を抱きます。また、すでに悟りを得たと思い、おごり高ぶった人たちは、地獄に落ちることとなるのです。」と舎利弗の要請を制止され、ここに三み度たび説法の中止を宣告なさるのです。 実に三度も説法の中止を宣告された舎利弗の気持ちは、いかほどでしたでしょうか。釈尊は舎利弗に説法を聞く姿勢として「信力堅固」「大信力を生ずべし」と「信」をお求めになられました。舎方便品第二⑤-44-     

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