『法華経』に学ぶ
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 「舎利弗よ、真実の教えはただ一つあるのみで、二つも三つも存在するものではありません。わたしを始めとするすべての仏が過去、現在、そして未来にわたり、ありとあらゆる場所において巧みな方法を用いて教えを説くことは、一仏乗(妙法蓮華経)を説き示し、仏と同じ智慧を与えるためなのです」 「舎利弗、そしてここに集う大勢の仏弟子たちよ、精神を統一してわたしの言葉を信じて理解しなさい。諸仏の言葉に嘘偽りはありません。真実の教えはただ一つあるのみで、ほかには存在しないのです」この言葉を終えられると釈尊は、今まで説かれた内容を四百八十四句、百二十一偈というたいへん長い詩句に託して再説なさいます。 「悟ってもいないのに、悟ったと思い込んでいる男性の出家者と尼僧たち、さらには、思い上がりの強い男性の信者、そしてわたしの言葉を信じようとしない女性の信者たち、合わせて五千人は席を立ち去りました。これらの人たちは、この座にはふさわしくない人で、わたしの威徳に耐えることができず立ち去ったのです。また彼らは福徳が少なく、この真理を素直に受け入れることができなかったのです」「いまこの座に残った人たちは、まことに素直で純粋な人たちです」「わたしは今日に至るまで、あなたたちは成仏できないと説いてきましたが、それは説くべき時ではなかったからです。今こうして説くべき時が来ましたので、真実を語ろうと決心したのです」「十方に仏の国がありますが、真実の教えはただ    一つのみで、二つ、三つと存在するものではありません」 「舎利弗よ、よく聞きなさい。わたしは遥かな過去に誓いを立てました。それは、生きとし生けるすべてを、わたしと何ら変わらない境地に導き入-53-

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