『法華経』に学ぶ
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れようという誓いです。その誓いは、今こうして満足することができました。生きとし生けるすべてを仏道に導き入れることができたのです」 「わたし一人だけではなく、すべての仏は、巧みな説法をもって導きを垂れ、一乗の教え(妙法蓮華経)を説かれるのです」 「舎利弗よ、よく聞きなさい。仏がこの世に出現する目的は、仏の智慧を説くためで、今がまさにその時なのです」 「わたしの心は喜びに満たされ、何ら恐れるところはありません。素直に方便の教えを捨て去り、ただひたすらにこの上なき尊い教えを説くのです」 「仏がこの世に出現することは、きわめて希まれなことで、また仏がこの教えを説かれることも希なことなのです。それはまさに、三千年に一度花を咲かせる優う曇どん華げに出会うことと同じです」 「この教えを聞いて歓喜し、ほめたたえる言葉を発すれば、過去、現在、未来という三世に出現する、一切の仏を供養することになるのです」「舎利弗よ、よく聞きなさい。諸仏の教えはこのように巧みな手法をもって説かれるものなのです。この教えを学ぼうとしないものには、到底理解できないことです」「仏弟子たちよ、あなた達は諸仏がさまざまに教えを説き、導きを垂れてきた事実を知りました。疑惑を生ずることなく、大いに喜びの心を抱き、自身が成仏できることを知りなさい。」ここで『方便品』は幕を閉じますが『方便品』の主人公である舎利弗の喜びは、いかばかりでしたでしょうか。舎利弗は長年にわたり釈尊にお仕えし、その教えに浴し智慧第一といわれながらも「成仏できない」と叱責されてきました。さらに『方便品』の冒頭では釈尊から「舎利弗よ」と声を掛けられながらも「諸仏の智慧は理解できない」と、説法を拒まれてきました。しかし「三止四請」という儀式を経てようやく説法が許され、この度「あ-54-   

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