『法華経』に学ぶ
64/188

前章の『方便品』は、瞑想三昧から立ち上がらょ  れた釈尊が、舎利弗に向けて「仏の智慧と悟りは、広大無辺で甚だ深く、あなた達には到底理解できない」というあまりにも衝撃的な言葉から始まりました。そして説法の中止を三度宣告する釈尊に対して、舎利弗の四度に及ぶ説法要請、いわゆる「三さん止し四し請しう」という儀式があり、いよいよ説法が始まったのでした。その中で明かされたことは、教えには「方便の教え」と「真実の教え」があるということ。すなわちそれは、釈尊をはじめとする諸仏(ありとあらゆる仏)は広大深遠な智慧をもって、はじめは方便の教えを説いて人々を教導し、最終的には真実の教え=『法華経』を説いて人々を悟りの世界へ到達させる、ということが明かされたのでした。またこれが、釈尊をはじめとする諸仏の一大事因縁(一大目的)であると宣言されたのです。「仏弟子たちよ、あなた達は諸仏がさまざまに教えを説き、導きを垂れてきた事実を知りました。疑惑を生ずることなく、大いに喜びの心を抱き、自身が成仏できることを知りなさい」との言葉で『方便品』は終わります。『方便品』は釈尊の説法でしたがこれを「し正ょう説せつ『方便品』の教えを拝聴した舎利弗が、そのり領ょう解げ(仏の教えを聞いて、内容を理解納得)したことを述べる段から始まりますが、これを「り領ょう解げ段だん」といいます。 さて『譬喩品』の構成を見ますと、先述のとおり前半は、舎利弗が釈尊に対して領解を述べる「領解段」から始まり、次に舎利弗の領解を聞いた釈尊が、その領解の内容をたどりながら理解の正しさを認可する「じ述ゅつ成じょう段だん」へと展開していきます。譬喩品第三①-56- 段だん」といい、説法の中心になります。『譬喩品』は

元のページ  ../index.html#64

このブックを見る