『法華経』に学ぶ
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須しゅ菩ぼ提だい、大だい迦か旃せん延ねん、大だい目もっ犍けん連れんたちに説かれます。そして、釈尊が舎利弗に対して「あなたは、必ず未来に成仏するでしょう」という成仏の認可を授ける「授じゅ記き段だん」へと移ります。つまりここで、舎利弗に対する教化は一応の結論をみることになるのです。また、ここまで(『方便品』から『譬喩品』の前半)を「法ほっ説せっ周しう」といい、釈尊は『法華経』の世界を理論的に説かれたのです。さてここで確認できることは、釈尊は一方的に説法されるのではなく、仏弟子に理解を述べさせて、その理解の正しさを確認し、そして成仏の認可を与えるという手順を踏まれることです。すなわち『法華経』は、師匠である釈尊と、仏弟子との対話形式で展開していることが理解できるのです。 後半になりますと釈尊は、『方便品』の内容を「三車火宅」という喩え話に託し、大だい迦か葉しう、慧えみ命ょうこの章が『譬喩品』と称される由縁です。ところで『法華経』には「法華七喩」という七つの喩え話が登場しますが、この「三車火宅の喩え」が第一番目になります。さて『方便品』の対告衆である智慧第一といわれる舎利弗は、じ上ょう根こん(上級者)ですが『譬喩品』の対告衆は「ち中ゅう根こんの四大声聞」といわれるように中根(中級者)です。したがって釈尊は、中根の弟子にも理解できるように『方便品』の教説を「三車火宅」という喩え話をもって再説なさるのです。すなわち、ここから釈尊は「譬ひ喩ゆ説せっ周しう」という説法方法を用いられ、身近な事柄に託して喩え話をもって、その真実を明らかにしていかれるのです。整理すると左のようになります。『方便品』「法説周」ょ  ゅゅ 『譬喩品』(前半)・正説段釈尊の説法・領解段正説を拝聴した舎利弗の領解・述成段釈尊が舎利弗の領解を認可・授記段釈尊が舎利弗の成仏を認可-57-

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