『法華経』に学ぶ
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そして「必ず仏となって天人に敬われる存在となり、この上ない教えを説いて数多くの菩薩を教化していきます」と誓いを立てたのです。ここで『譬喩品』の冒頭からはじまった舎利弗のり領ょう解げ段だん、いわゆる教えを聞いてその内容を理解し、納得したことを釈尊に告白する段は幕を閉じます。ところで、舎利弗が釈尊の門下に連なった時期は明確にはなっていません。盂蘭盆の謂いわれで有名な大だい目もっ犍けん連れん(目連)と二人して二百五十人もの人を引き連れて、釈尊の弟子となったといわれていますが、恐らく早い時期であったと思われます。以降長年にわたり説法を拝聴してきましたが『方便品』では「あなた達には理解できない」と突然釈尊から説法の中止を宣告されました。舎利弗は即座に聴衆の代表として四度にわたり説法を懇請し、釈尊はついに説法を開始せられたのです。いま説法を拝聴した舎利弗は歓びに満ち溢れています。まさに明鏡止水、その心は一点の曇りもなく澄み切っていたことでしょう。釈尊は師匠として、智慧第一あるいは大智(大いなる智慧者)と称される愛弟子の告白をどのように感じ、どのようにお聞きになられたのでしょうか。きっと暖かい、そして慈悲深い眼差しでご覧になられていたことでしょうし、その成長を大いにお歓びになられ、  満足なされていたことと拝察できます。さて、舎利弗をはじめとする二乗(声聞・縁覚)と呼ばれる仏弟子たちが「成仏できない」と叱責された由縁の一つに、自己の修行に執着するあまりに他者を顧みない、すなわち他者への働きかけが無い、ということが挙げられます。ここで、舎利弗の言葉にあらためて注目しますと「この上ない教えを説いて、数多くの菩薩を教化していきます」と誓いの言葉で締めくくられていることが確認できます。また『方便品』で説法を要請した言-65-

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