『法華経』に学ぶ
79/188

釈尊はこのようにして、舎利弗に授記せられたのち、重ねて授記の内容を四十六句、十一偈半の詩句に託して示され『譬喩品』の前半は幕を閉じます。 『法華経』ではじめに成仏を認められた仏弟子が、「智慧第一、大智、長子」といわれる舎利弗です。成仏を認められ、華光如来という名を授かった舎利弗の歓びは、いかほどでしたでしょうか。単に華光如来という仏名を授かったばかりでなく、その素晴らしい徳目を表す「如来の十号」もあわせて頂戴したわけですから、未曾有の歓びであったに違いないでしょう。さらには、自身が未来世において、華光如来となって活動する国土のことや寿命、さらには、その教えの存続する期間などを具体的に、こと細やかに拝聴することができ、まさに「踊躍歓喜」であったでしょう。 ここで、舎利弗が授記されるまでの経緯(法説周、『方便品』~『譬喩品』前半)を一瞥しておきましょう。舎利弗は、説法の中止を宣告する釈尊に対して、一座の弟子を代表し「敬心を以て」「敬信し」そして「大歓喜を生ずべし」と全身全霊を傾けて説法を懇請しました。それに応えて釈尊は「舎利弗よ、あなたは実に真摯に説法の要請をしました。あなたの覚悟を知った私は説かないわけにはいかないでしょう」と説法が始まったのです。(『方便品』)舎利弗は長年にわたり成仏を否定されてきましたが「成仏できる」という前代未聞の説法を拝聴し「踊躍歓喜」し、その領解(理解)の内容を釈尊に告白しました。舎利弗の領解を聞かれた釈尊は、その正当性をお認めになられ、このたび授記するに至ったのです。(『譬喩品』前半)-71-    

元のページ  ../index.html#79

このブックを見る