『法華経』に学ぶ
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を得ようとは、まるで想像することができませんでした。私たちは、深く自らその幸いを喜んでおります。大いなる利益を得ることができましたことを。さらに、はかりしれない莫大な量の珍しい宝を、求めてもいないのに自然に手にすることができたことを。」まず四人の仏弟子は『法華経』を聞くまでの自  それは、低い悟りに満足していたこと、自ら進ん身のありさまや思いを包み隠さずに告白しました。で仏道を求めなかったことなどです。ところが『譬喩品』で舎利弗が成仏の保証を与えられたこと、つまりは、自分たちもまた成仏できるといういまだかつてないことを聞き、大いに感激し深い喜びの中にいることを告白したのです。さらには、釈尊の巧みな教化に導かれ、求めてもいなかった『法華経』というすばらしいこの上ない宝を、自然に得ることができた喜びを釈尊に述べたのでした。 今ここに、舎利弗に続いて新たに四人の仏弟子が釈尊の真意を知ることができました。最上の敬いの姿をもって、師匠である釈尊の尊顔を拝する須菩提、迦旃延、迦葉、目犍連の四人。おそらく先に成仏の保証を受けた舎利弗も、側に侍はべっていたことでしょう。師匠釈尊と歓喜踊躍する五人の仏弟子たち、そして同じく説法の座に連なり、その光景を見守る大勢の仏弟子たちの姿が目に浮かんできます。釈尊はどのような面持ちで、愛弟子の姿をご覧になられていたのでしょうか。威厳に満ち溢れ威風堂々としたお姿ではありますが、きっと満足なされ、優しい表情、優しい眼でご覧になられていたことでしょう。四十余年という長きにわたり巧みな手立てをもって教化を続けてこられた師匠と、長きにわたりその教化に浴してきた弟子との気持ちが、このたび「法華経の舞台」で通じ合った歴史的瞬間、素晴らしい瞬間、そして劇的で希有な場面なのです。-91-

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